先崎勝也氏

 元プロサッカー選手である先崎勝也氏。彼は現在、自身が代表取締役を務める会社で、ある事業の推進に取り組んでいる。その事業とは選手個々のフィジカルを測定し数値化することで、明確な目標を持つことができる「nowtis(ノーティス)」の展開。「nowtis(ノーティス)を広めることによって日本サッカー界の底上げに貢献したい」と語る先崎氏に、nowtisを通じて選手に伝えたいことや今後の目標などについてうかがった。

ーーnowtisの数値で判明した、選手やチームに関しての興味深い話などがあれば教えていただけますでしょうか?

 今までで約1年間、ノーティスの取り組みをしていて、高校・大学合わせて60チーム、選手数として4000名弱のデータが採れたんですけれど、その中から21名がプロ入りしました。その21名の数値を見ると、やはりフィジカルが数値的にも高かったです。大卒の選手はもちろんですが、例えば興國高校から横浜F・マリノスに入団した樺山諒之介選手などは、テクニックの面でもすごく上手い選手なんですけれども、数値を見ても高校生にもかかわらず高い数値でした。

 また、チームカラーというか、プレースタイルによっても、数値の傾向の違いが出るんです。たとえばテクニックを重視するようなチームの場合、アジリティの項目で高い数値が出る傾向にありました。また、しっかり守ってカウンターを狙う堅守速攻タイプのチームの場合は、30mダッシュの数値、つまりスプリント能力において高い数値が出る傾向にありました。チームカラーが反映されているんですね。

 プロ入りした21名の選手については、30mダッシュや回復力などをチェックするYo-Yoテストなどの数値はプレースタイルによって若干のバラつきがあったんですけれど、アジリティの項目では、ほぼ例外なく全員が高い数値でした。やはり体の使い方やバランス力に優れていることがわかりました。

ーーたとえば海外の強豪クラブに属する選手のフィジカル数値などが取れたら面白いですね?

 nowtisのデータはアプリ内で管理していて、自分の記録だけでなく他チームとも比較ができるようになっているんですけれども、現在、そのアプリ内で週に数回、トレーニングや栄養に関する情報を配信しているんですね。先日、その配信責任者が、データからメッシとネイマールのスピードを算出してくれたんです。データを見てみたら、30mとか50mとかがメチャメチャ速くて。テクニックが神レベルだということは理解していたんですけれども、当たり前ですがスピードに関しても「とんでもないんだな」と感じました。

ーーnowtisを通じて選手に伝えたいこととはどういったことでしょうか?

 近年、サッカー界において世界と戦うためには「アスリート化」だったり「フィジカル」という言葉を耳にすると思うんですけれども、私自身はフィジカルがすべてではないと思っているんです。いちサッカーファンとしてもテクニカルなサッカーが好きですし、単にフィジカルを強くしなければいけないとは思っていないんですけれども、たとえば将来的に日本代表になって世界と戦うことを目指している選手たちには、強さや速さなど、フィジカルは強化すべきだと思っていますし、サッカーをやっているすべての選手たちも、目の前の試合に勝ちたい、試合に出たいと願っていると思うんです。そして自分のイメージ通りのプレーがしたいと思っていると思います。そういった選手に対しても、ケガをすることなく最大のパフォーマンスを発揮するために、nowtisを最大限活用して欲しいと思っています。

ーー先崎さんの今後の目標を教えていただけますでしょうか?

 nowtisを通じて、選手一人ひとりが明確な目標を持ち、レベルアップできるようになって欲しいと思っていますし、本取り組みを通して、指導者の方やフィジカルトレーナー、栄養士の方、さらに民間企業の方などと一緒に日本サッカー界・日本スポーツ界の発展に少しでも貢献できたらと考えています

ーーサッカーが上手くなりたいと思っている中学生・高校生に何かアドバイスをお願いします

 いま皆さんがサッカーをやることができている環境が当たり前だと思って欲しくなくて、サッカーができていることに感謝をして欲しいなと思っています。どんな環境やどんな状況でも言い訳することなく、常に自分自身に向き合って欲しいなと思います。そして、短期的、中期的、長期的な目標をしっかりと定めて、それに向かって一心不乱に努力することが、成長するうえで大切なことだと思っています。