先崎勝也氏

 かつて高校サッカー界の名門・静岡学園の10番を背負っていたという先崎勝也氏。彼は現在、自身が立ち上げた会社の代表取締役として、育成年代に向け「nowtis(ノーティス)」というフィジカル測定の導入活動に注力している。その背景には、高校や大学時代の「ある体験」があったからだという。氏はなぜフィジカル測定の導入に邁進するのか? 育成年代の選手や指導者に対して先崎氏の思いをうかがった。

ーー自身の高校時代の時と比べて、今の高校生たちのフィジカルをどう感じていますでしょうか?

 私が高校の時は、このような数値を測定した事が無かったので、今の選手たちと実際にどれくらい違うのかはわからないのですが、まずは監督やフィジカルトレーナーの方など指導者の方に優れた方が多くなってきているので、体の使い方や足の運び方、スプリント能力など、トータル的にレベルは高くなっているのかなということは感じています。

 ただ、たとえば高校の場合だと3年間という限りある期間の中で、現場レベルでは、フィジカルより技術や戦術を優先することが多いのかなと感じます。フィジカルにあまり時間が割けないという事情も理解はしていますが、やや線が細い子たちも見受けられるという印象も感じますね。

ーー自分の高校時代に「nowtisのようなフィジカル測定があったらよかった」といった経験はありましたか?

 高校のときなどは運も良くて世代別の日本代表だったり静岡選抜に選ばれたことがあったのですが、当時の井田監督や現監督の川口修さんから「先、もっと走れ!」と言われることが多かったんです。ただ、当時の自分には走り切る基礎体力が無かったのか、それとも頭を使ってプレーすることができていなかったのかがわからなかったんです。もし、自分が高校生のときに、nowtisのような取り組みがあったなら、「何が劣っているのか、何が足りないのか」などやらなければいけないことが、より明確にわかったんじゃないかなと思ったんです。

 指導者の方から「走れ」と言われたときに、数値的に悪くないのであれば、「ああ、もっと頭を使ったプレーをしなければいけないんだな」と理解できますし、基礎体力的な数値が劣っていたのであれば、自主的にもっともっと走り込みを増やしたり、栄養について考えていただろうなと思います。今の高校生たちにも、そういった形で活用してもらうことによって、もっともっとレベルアップに貢献できるんじゃないかなと思っています。

 それと、これはあまり大きい声では言えないのですが(笑)、高校のとき、授業中に居眠りをしていたり、靴のかかとを踏んで履いていたりしたことがあったんです。今思えば、恐らくそれで体のバランスを悪くしてしまったり、姿勢が悪くなったりしていったんですね。その後大学に進んだのですが、大学入学後は、今までできていた動きやパフォーマンスができなくなっていったんです。でも当時は「単に練習量が足りないんだな」と思っていたので、練習を重ねるんですけど、動作的によくない動きを積み重ねるので、どんどん悪くなっていってしまったんです。結果的に体の使い方が悪くなって前十字靭帯を切ってしまう大ケガをしてしまいうことになって。そういう経験をしたこともあったので、定期的にコンディションを測定して、自分の体と向き合っていたら、「ケガをすることも無かったのかな」という思いもあるんです。

 nowtisのようなフィジカル測定があれば、自分に必要なものや、自分の体と向き合うことができると思うので、レベルアップやケガの防止などに役立てて欲しいなと思います。

ーー指導者や選手たちからはどんなリアクションがあったのでしょうか?

 高校三年生の選手からは大学生と比較して、大学で活躍するためにこの1年間、どこを強化しないといけないかがより明確になったと言うお声を頂いております。指導者の方からも、この取り組みに対してとても理解してくれていると感じますね。例えば母校の静岡学園は第98回全国高校サッカー選手権大会で優勝しました。そのときの選手たちのデータを残していれば、今現在在籍している子たちと数値を比較することができるので、「この時期まではこのレベルまで数値を上げていかないといけない」とか「数値的には問題ないレベルなのに成績が伴っていない場合は、もっとテクニックを練習しないといけない」といった具合に、「指導に活かせる」という声は数多くいただいています。

 また、高校のときにフィジカル測定をしていた選手が、グングン成長してプロになった場合、その選手の高校時代のデータを、今いる子たちのデータと比較することで違いがはっきりとわかるので、「アドバイスもしやすいよね」という意見もいただいています。

次回はnowtisの数値から判明したことや選手に伝えたいことついて話を聞く。