表示されたアディショナルタイムは4分だったが、主審がさらに伸びることを告げていた。

 防戦一方の武南は44分に左CKを獲得したが、ミスキックでチャンスにつなげられなかった。ところが45分、自陣右でFKを得ると、小山がファーサイドに勢いにあるボールを送った。後半28分から起用されていたMF塚田恵斗(3年)のヘディングシュートは、逆サイドのネットに突き刺さりドラマチックな決勝点が生まれた。決まった次の瞬間、タイムアップを告げる主審の長い笛が鳴った。

 内野慎一郎監督は劇的な勝利の余韻に浸ることはなく、「昌平戦に向けて1年間準備してきたので、10人になっても負けは許されませんでした。今年のチームは負けないことが根付いています。よく粘ってくれた」と語った。けがで1シーズンを棒に振り、リハビリに励んできた塚田に関しては「長い間悔しい思いをしてきたが、あの得点は努力のたまものです」と賛辞を送った。

 昨年の準決勝に続いて武南に競り負けた上田監督は、「勝負というのは難しいものですね」と悔しさを封印しながら切り出した。後半の戦い方を尋ねると、「相手が10人になってからは中を固めていたので、外から崩すことを考えました。清水が打ったシュートのようなシーンをもっとつくりたかったのですが……。この大会を経験した1、2年生のほかにも素材がいるので、またいいチームをつくって挑戦したい」と潔く敗戦を受け入れるとともに、「今に見ていろ」というバイタリティーを感じさせる顔付きだった。     

(文・写真=河野正)

▽第105回全国高校サッカー選手権埼玉予選
第105回全国高校サッカー選手権埼玉予選