浦和南が立教新座に快勝!3大会ぶり15度目の決勝へ

立教新座 vs 浦和南(写真=石黒登)

 第100回全国高校サッカー選手権埼玉予選の決勝トーナメントは11月7日、埼玉スタジアムで準決勝2試合が行われ、第1試合は浦和南立教新座に3-0で快勝し、3大会ぶり15度目の決勝に進んだ。立教新座の初のファイナル進出はならなかった。

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 浦和南は前線、中盤から絶え間なく圧力を掛け、長いキックを多用してマイボールにする時間帯を長く保って押し込んだが、なかなか決定機をつくれなかった。むしろ最初にビッグチャンスを迎えたのは、やや劣勢の立教新座だ。

 前半6分、MF八太聖(3年)の左ロングスローのこぼれ球から、MF熊谷哲人(3年)のシュートを皮切りにFW大塚康生(3年)まで4人が立て続けて強烈な一撃を放った。シュートコースが空いていたら、どれか1本は決まったと思われる鋭い弾道。ところが浦和南の選手は出足の一歩が早く、4本とも間髪入れずに体を預けてブロックし、すべて跳ね返してみせたのだ。

 こういう守備陣の奮闘にアタッカーもきっちり応えるところが、今大会の浦和南の強みだ。

 前半26分にMF坂本空翔(3年)、27分にFW立沢太郎(2年)が惜しいシュートを放ち、ゴールの予感が漂い始めた30分に先制。右FKのクリアボールを拾ったMF大里直也(3年)が、左外に持ち出してから中に切れ込んで決めた。さらにこの2点目が浦和南には願ってもなく、立教新座にしたら消沈させられる失点となる。

 前半の追加タイムに入って間もなく、DF安田航大(3年)の右クロスを立沢が2人に挟まれながらヘッドで突き刺した。

 立教新座は準々決勝の4-2-3-1から5-3-2に変更し、守備に神経を注ぐ陣形を敷いた。しかし2点を追い掛ける後半は、フレッシュな選手を次々に投入し、戦況打開を狙った。後半24分、左の大塚からMF石田大河(3年)を経由し、最後は熊谷が惜しいシュートを放ったが、GKに捕球された。

立教新座 vs 浦和南(写真=石黒登)

 そうして立教新座の最大の得点機が、交代出場した3人によって36分に訪れる。MF河下楽(1年)が中央から軽やかに長い距離を運び、敵の守備網を切り裂く絶妙のスルーパス。預かったFW齋藤洋大(2年)の決定打はGK黒田海渡(3年)に弾かれ、そのこぼれ球をMF見山優(1年)が打ったが、枠を捕らえられなかった。決まっていれば1点差で勝負は分からなかった。

 難を逃れた浦和南は39分、FW丸山峻也(3年)が中央から持ち込み、左で受けたMF奥村青葉(3年)が駄目押しの3点目を蹴り込んだ。

 OBでもある野崎正治監督は、勝ってもいつも通り手放しでは喜ばず、「レベルが低くて、決勝はどうしよう」とぼやきから始まり、「ボール(メーカー)が変わり、芝も(準々決勝)と違ってキックがうまくいかなかった」と快勝にもため息ばかり。

 さらに2試合連続得点したほか、左から好クロスを連発した大里について「もっとやってくれないと困る」と苦言を呈し、4戦連続無失点に貢献したGK黒田には「当たり前のことを当たり前にやっているだけ」とそっけない。しかし選手として、指導者として百戦錬磨の野崎監督だ。どの言葉もすべては選手の気の緩みとスキが生じないための親心であり、チーム掌握術でもある。

 2試合連続ゴールを挙げ、主将のDF坪井優太(3年)が「チームのムードメーカー」と評する立沢は、「今日は得意のヘディングで取れてうれしかった。決勝は相手に食らい付いていく覚悟で戦いたい」と意気込みを示した。

 今季の立教新座は関東高校大会予選と全国高校総体予選とも8強まで進み、今大会は57年ぶりとなる2度目のベスト4まで勝ち上がった。就任9年目の前田和伸監督が、攻守に安定した勝負強いチームに仕立て上げた結果だ。指揮官は「2点目が悔やまれる。もっと勇気と落ち着きがあれば圧力に屈しなかったのではないか」と述べた後、「コロナ禍で苦しんだ中、よくここまで来てくれた」とイレブンの労をねぎらった。

(文=河野正、写真=石黒登)

▽第100回全国高校サッカー選手権埼玉予選
第100回全国高校サッカー選手権埼玉予選