流通経済大柏vs暁星国際

　6月20日、令和3年度全国高校サッカーインターハイ（総体）千葉予選の決勝が行われ、流通経済大柏と暁星国際の一戦は、完璧な試合運びをみせた流通経済大柏が6-0で勝利し千葉県を制した。見事優勝を飾った流通経済大柏は8月に福井県で行われる全国総体に出場する。

　暁星国際はマンツーマンディフェンスでボールを奪い、そこから9番MF武田雄大、10番MF辻野悠河が中央に相手を食いつかせてサイドのスペースを狙う。対する流通経済大柏は10番MF渋谷諒太と18番MF松本洋汰がボールを散らしながら、サイドで数的優位を作り相手中盤を攻略する。

　一進一退のゲーム展開の中、流通経済大柏がセットプレーから均衡を破る。32分、右CKを獲得すると、GK前のMF松本を残し選手がファーサイドに固まる。そこから順番にニアの方向に選手が走り出すとMF渋谷のあげたアウトスイングのボールが2番目に走り込んでいた2番DF長谷部陽也の頭にドンピシャで合いゴール。暁星国際はマンツーマンで対応していた為、ニア方向に走られて前に入られてしまった。

　この先制点で勢いに乗った流通経済大柏がここから畳みかける。33分、MF渋谷のスルーパスに右サイド深くを抜け出した11番MF小林恭太がキックフェインでDFを滑らせ左足を振り抜く。GKが弾いたところを9番FW石川裕雅が詰めて追加点。更に36分、2点目と同様右サイドに人数を掛けてパスを繋ぐと、MF松本が突如ドリブルを開始。DFの間を抜けていき「その前に小林のキックフェイントで相手が滑ってくれていたので」キックフェイントで思い通り相手を滑らせると、寄せてきたもう一人も冷静に剥がしてシュート。このシュートはDFのカバーに合うもこぼれたボールがラインを割りゴールの判定。流通経済大柏が怒涛の攻撃で一挙3点を奪い前半を折り返す。

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　後半に入っても攻撃の手を緩めない流通経済大柏は59分と67分に後半から出場のMF堀川大夢が連続ゴール。これで試合を決めると極めつけは試合終了間際の80分、左CKを獲得するとボールに向かっていった3番DF西岡亮哉をMF渋谷が呼び止めてキッカー交代。しかし何を思ったか渋谷はDF西岡に声を掛けもう一度キッカー交代。この行為が時間稼ぎに当たると主審からMF渋谷に注意が与えられる。そして自陣方向に戻るMF渋谷が突如ニアサイドに方向を変えて走り出すと、DF西岡の蹴ったボールがそのMF渋谷のもとへ。これにMF渋谷がダイビングヘッドで飛び込みゴールを挙げた。暁星国際はこのMF渋谷の予想外な動きにDFがマークに付ききれずフリーにしてしまった。

6ゴールを奪った流通経済大柏

　試合後このシーンを本人に確認すると「西岡は気付いてくれてなかったかもしれませんが、あれはトリックプレーです。この試合自分が何もしていなかったのでゴールが欲しかった」と明かした。準決勝専大松戸戦でもMF渋谷は相手の動きを確認して判断し、そのショートコーナーからゴールが生まれていた。キャプテンとしてチームをまとめながらも、ゲーム展開を読んだMF渋谷の試合巧者ぶりが垣間見れるシーンだった。試合はこのまま終了し、6-0で流通経済大柏が勝利した。

　「自分たちで考える」最近の育成年代の指導現場でよく聞かれる言葉だが、この日の流通経済大柏はそれを見事に実践してみせた。先ずは試合開始前のコイントスからそれは始まる。風が強かったこともあり、キャプテンMF渋谷は風上を選択。試合開始後もミラーゲームになっている事や、相手の中盤がマンツーマン気味に来ると「タッチ数を少なくして相手を動かしてそこから同サイドで攻めればいける」とMF渋谷やMF松本が感じたことを飲水タイムを利用してチームで共有。そこから前半に3ゴールを奪うと、ハーフタイムには「0-0でもう一回入ろう」、「守りに入ったらやられるぞ」、「4点目5点目を取りに行こう」、「風下だから足元で繋いでいこう」メンタル面と戦術面、両面の話が選手たちから次々に出る。それが後半の3ゴールに繋がった。

　そしてもう一つ、選手たちの意識の高さも流通経済大柏の強さの一因。プレミアリーグで強豪と試合することで鍛えられていることももちろんあるが、監督や選手から「相手のシュートを0に抑える」という言葉がよく発せられる。「(準決勝の)専大松戸戦でシュートを3本打たれてしまった」と、例え無失点で抑えて勝利したとしてもシュートを打たれていたら全く満足しない。練習中からも「青森山田だったらやられてるぞ」という声で自分たちのハードルを上げて意識を高く保っているという。

　これで3大会ぶり15回目のインターハイ出場を決めた流通経済大柏。「全国に出る。全国で勝つ」そのチームにとっては千葉県制覇はただの通過点。「青森山田を倒して日本一になる」とキャプテン渋谷が言うように流通経済大柏が日本一という頂へこのまま突き進む。

　(文・写真＝会田健司)