立教新座MF大塚康生が値千金のPK奪取、決勝点。グランデでは全国も経験したドリブラー

立教新座イレブン(写真=石黒登)

 前半から多く時間でボールをポゼッションしてゲームを進めた立教新座だが、「相手の深いところに行こうとするチャレンジが少なすぎた。アタッキングサードに入る手前で手間だけかけている状態だった」と前田和伸監督。それを示すように前半に獲得したコーナーキックは1本のみ。

 「その結果が侵入できていないすべてだよねと。セットプレーが強みなわけじゃないですけど、やっぱりその数字が表しているようにただボールを持っているだけで怖さがない。後半はそこを深く行け、相手は中央を固めて後ろに人数をかけていたのでそこが固かったらサイドからと」。

 後半はアタッキングサードに入り込むプレーも増え、コーナーキックも8本に増加。ひとつ上の代でも出場していたMF石田大河が起点となって1年生MF見山優などが次々とシュートを放っていく。しかし好守を見せていた花咲徳栄の長身GK田中僚の牙城を崩すことができない。

 一方、花咲徳栄は隙を見た一瞬のカウンターに鋭さ。後半14分には2回戦のふじみ野戦で2得点を奪ったMF岡崎爽多のパスにDF岡田友希が抜け出し右足でシュート。股抜きを狙ったシュートは、しかし立教新座GK戸田羽響が咄嗟に股を閉じてコースを変えてゴールは許さず。

 このまま延長戦に突入かと思われた中で試合が動いたのは後半43分。立教新座は左サイドでボールを持ったMF大塚康生がドリブルでひとりふたりと剥がし、エリア内に侵入したところで3人目に倒されてPKを獲得。これを自ら右足で右サイドに流し込んで1-0で勝利を掴んだ。

 得意のドリブル突破からPK奪取。そしてそれを自ら決めたMF大塚康生は「課題ばかりの試合だったんですけど、最後に何とかゴールに収めることができて良かったです」と振り返った。

 前半は足をためていた。「普段は前半から結構仕掛けるタイプのプレーヤーなんですけど、今回は前半ちょっと抑え気味で相手の様子を見ながら、後半はどんどん仕掛けて点数を取っていこうと思っていた」。前回の試合では終盤にかけてガス欠となったことを反省。また、前田和伸監督は「前半から仕掛けることが多くて、相手がそのペースに慣れてしまっていたので、後半にある程度仕掛けるようにと」というように、大塚のドリブル突破を最大限生かすための作戦だった。

 そしてそれが実を結んだのがアディショナルタイム。左サイドでボールを持った大塚は「あそこから右に交わしてシュートを打つというのが自分の形」とシュートまでイメージしてドリブルへ。切り替えしでひとり剥がし、さらにカバーに来るディフェンスのスライディングを冷静に交わして侵入すると、エリア内でファールを誘い値千金のPK奪取。PKは「キャプテンが背中を押してくれたので、自信を持って蹴れました」と、しっかりと右に蹴り込んで勝負を決めた。

 一番の武器は“相手を抜く”ドリブル。「スピードのあるドリブル」「重心をずらしたドリブルからのシュート」を得意とする。まだ体力面などで課題はあるがそこを克服し、また自らの判断で緩急を作ることができるようになれば、さらにそのドリブルを生かせる機会も増えてくるだろう。

 中学時代はGRANDE FCに所属し、3年時には日本クラブユース選手権で全国16強入りも経験した。大塚も背番号10を背負い、全国のピッチを踏んだが、「自分のプレーには全然納得できなくて終わってしまった」。だからこそ「この高校サッカーで結果を残せるように頑張りたい」。

 「自分たちの目標は全国。埼玉で1位を取って今年全国に出たい」と大塚。翌日の準々決勝・武南戦は途中出場から後半猛攻を見せたチームの原動力に。惜しくも1-2で敗れたが、可能性は示した。得意のドリブルにさらに磨きをかけて、インハイ、選手権で“3年ぶり”の全国を目指す。

記事提供:埼玉サッカー通信・石黒登

▽令和3年度関東高校サッカー大会埼玉予選
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