夏の走り込みで更にハードワークが出来るチームに進化した大阪産大附!首位の履正社相手に一歩も引かず価値あるドロー

履正社攻撃陣を引っ張ったエースFW廣野大河

 高円宮杯 JFA U−18サッカープリンスリーグ2021関西の第11節が9月4日に行われ、首位を走る履正社(大阪)はホーム履正社茨木Gで8位大阪産大附(大阪)と対戦。エースFW廣野大河のゴールで先制した履正社だったが、追加点を奪えないでいるとスローインから左サイドを崩され痛恨の失点。試合は1-1の引き分けとなった。

 前節、京都橘(京都)に4-0で大勝し幸先の良い後半戦スタートを切った履正社。しかしこの日は「ビルドアップが上手くいかず、2トップに対して浮き球が多くセカンドボールも拾えなかった」(平野直樹監督)と大阪産大附の素早いプレスに大苦戦。ストロングである11番MF名願斗哉とU-17日本代表2番DF西坂斗和の左サイドコンビも決定的な仕事をさせてもらえず、前半唯一の決定機だった42分の9番FW宮路峻輔が抜け出した場面もGKにセーブされてしまい無得点で折り返す。

 思うように試合を進められない履正社だったが、そこはプリンス関西で首位を走るチーム。流れが悪い中でもエースが一発で見事に仕留め先制に成功する。58分、20番MF高橋陸がヘディングで逸らしたボールで「あそこは自信があったので上手く持って行けて勝負できた」DFラインの裏に抜け出した10番FW廣野大河が豪快に右足で左サイドネットにシュートを突き刺した。

 しかし履正社が追加点を決め切れないでいると、「夏休みに遠征で強化して、帰って来てからもすぐ3日間走り込みの強化をした」(MF島田賢斗)「3日間コート往復50本のタイム走をやって走り切れるようになった」(MF三政響希)という大阪産大附もここから反撃に出る。

 DFラインを高く保ちながら前線からもハイプレスを敢行し履正社を押し込むと76分、右サイド深い位置のスローインからパスを繋いで崩す。背後に抜け出した10番MF島田賢斗が速いグラウンダーでマイナスのボールを中に入れると、ゴール前に飛び込んだ7番MF三政響希が「左足で打とうか迷っていたんですが咄嗟に右足が出て入りました」と上手くこれに合わせて「あの形は初めてです」と本人も驚くファインゴールが生まれた。

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同点ゴールを決めた大阪産大附7番MF三政響希

 試合を振り出しに戻し勢いに乗った大阪産大附は逆転を目指し更に攻勢に出るが、80分の左CKからのチャンスを決め切れずタイムアップ。首位を相手に好ゲームを演じた大阪産大附だったが勝利まではあと一歩届かず、1-1の引き分けで両チーム勝ち点1を分け合う結果となった。

 試合後、大阪産大附の中西幸司監督は「前回対戦時も前半は0-0で後半受け身になってやられてしまった反省を持ちつつ今日の履正社戦に挑みました。前回と同じように能力の高い相手に対して受け身にならずに自分たちから仕掛ける守備をテーマにやってきて、そんな中でも後半、あそこまで前を向かせていなかったんですが、相手の前線のエースの選手に沈められてしまった。前回はあそこから失速してしまって低いラインになってしまったんですけど、そこは子供たちも成長して自分たちで引かずにやってくれた」と振り返り、首位の履正社相手に一歩も引かずあと一歩のところまで追いつめた展開に手応えを口にした。

 更に指揮官は「この展開だったら逆転したかった。彼らも勝ち切りたかったと思いますが、まだその辺の力が足りないところかなと思います」と続けた。前期の最終戦で興國(大阪)にセットプレーから3失点を喫したことがきっかけとなりゴール前の守備を見直した。そのことでお互いで声を掛け合うようになり守備の距離感も改善された。そして前線や中盤の選手の献身的なプレスバックも際立っていた。「うちは能力も高くなく、上背があるわけでもないので」(中西幸司監督)と飛び抜けた個がいない中でハードワークが出来るチームに仕上がってきた。

 「ボールを取った後の攻撃が課題」と選手たちも口にしたが、逆に言えばあとはそこが改善されれば「勝ち切れるチーム」になっていける。夏の強化で一皮むけた感のある大阪産大附。今後のプリンスリーグや選手権での躍進に期待できる。そんな姿を見ることが出来た一戦となった。

 一方の先制しながら追い付かれてしまった履正社の平野直樹監督は「勝ち点2を失ったとも言えるし、悪いながらも勝ち点1を手にしたともいえる。君たちの2021年9月4日は今日しかない。1日1日を無駄にせず大切にしていかないと」と試合後のミーティングで選手たちに伝えた。エースのFW廣野も「悔しいです。何とも言えないです」と試合後に振り返り、真っ暗になった試合後のピッチに残り厳しい顔つきでチームメイトと議論を交わした。プリンスリーグも後半戦に入り、3年生にとっては最後の選手権も迫っている中でこの勝ち点1を今後にどう活かすか。そういう危機感が指揮官とエースから感じられた。

(文・写真=会田健司)

▽高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ2021 関西
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