試合後の両校(写真=矢島公彦)

 だとしても、高円宮杯プリンスリーグ関東2部に所属する國學院久我山を完封した早稲田実業の守備は見事だった。だから森泉監督に続けて質問してみた。「それでも、あれだけの堅守を構築できたのは、選手たちが守備に対して楽しさや誇りを感じたからではないでしょうか?」と聞くと、謙虚な指揮官の口角がわずかに上がった。

「今日は『早実のディフェンシブなサッカーを見せることを楽しみなさい。早実の愚直なサッカーを表現することを楽しもう』と送り出しました。昨日から言っていたので、彼らも肩の荷が下りてプレーできたのかなと思います」

 言葉の妙である。「美しく勝て」の横断幕を掲げる國學院久我山のサッカーも確かに魅力的だったが、早稲田実業が見せた綺麗に連動する守備も違った美しさがあった。「機能美」というワードがピタリと当てはまる堅守。構築の背景としては指揮官のメッセージも大きかっただろう。だから全国行きの切符を手にした選手たちが胸を張ってロッカールームに引き上げる時、充実感に満ちた表情だったのが目に焼き付いている。

(文=志水麗鑑)

▽第102回全国高校サッカー選手権東京予選
第102回全国高校サッカー選手権東京予選