大阪国際大学のFW京谷秀(写真=大阪国際大学サッカー部提供)

 関西学生リーグ2部で戦う大阪国際大学。その1部昇格を目指すチームをキャプテンとして引っ張っているのがFW京谷秀(4年)だ。

 高校時代は東海大仰星で2年時から途中出場のチャンスを掴んだ京谷は選手権予選で決勝の舞台も経験。しかし、最高学年の3年生になりプリンスリーグ開幕戦でスタメンを掴んでいたものの、チームの中心選手にはなり切れず、その後は徐々にスタメンの座を失っていった。

 そして「サッカーはもういいかなって思っていました。サッカーなしの生活っていうのをやったことがなかったので、そういう憧れみたいなものあって」と卒業後は本気でサッカーを続けることに懐疑的になっていた京谷。しかしインターハイ予選のプレーを見た長野崇監督から声が掛かり、もう一度サッカーと向き合う事を決意した。

 「燃え尽きたと思っていた気持ちもあるんですけど、やっぱりもっとサッカーでやれた部分があるんちゃうかなっていう気持ちもあったので、国際大に入って『一年からトップで出てエースになってやる!』と考えるようになりました」。

 京谷が考えを変えた理由にはもうひとつ。「親に高校で辞めるって言った時に、ちょっと悲しそうにしていて。週末に自分が活躍しているところを楽しみして生活していたので、やっぱり親を喜ばせてあげたい」と両親への恩返しをサッカーでしたいという気持ちだ。

大阪国際大学のFW京谷秀(写真=会田健司)

 しかし、大学に進学しサッカー部に入部するもコロナ禍で試合は無観客に。試合で両親に活躍する姿を見せることが出来なくなってしまう。そこで「大学でどうやったら喜ばせられるかと思ったらやっぱり結果出すことやし、まずもちろん試合に出ることやと。そして大学に行くまであまり得点を取ったことなかったんですが、取ったら親も喜ぶやろうな」と家に帰った時に目に見える形で報告をするために、試合に出てゴールを決めようという結論に至った。

 そして得点にこだわった結果、2回生時には関西3部で得点王と優秀選手に輝く。「 サッカーでちょっとずつ恩返しできてるんかなっていうのはありますね」と手応えを口にする京谷は今年4回生になりチームのキャプテンにも挑戦し、90人の部員を引っ張っている。

 一度は自らピリオドを打とうと決意したサッカー。それでもスポーツ科学を取り入れ、社会人になるための教育にも力を入れている長野監督との出会いが京谷を変えた。

 「キャプテンになってから何回も監督に怒られるようなこともあったんですけど、なんとなく先頭に立ってチーム動かすってこういう事なんかなって、今は分かってきました。キャプテンとはこういうものというよりも、どちらかというと自分らしいキャプテンをやろうと。それは前年度の主将にも『俺の真似をしなくていいよ』と言っていただいたんで。出来ると信じてやって、間違ったことは修正しながらやっています」。

 中高時代はキャプテンのキャラではなかった男が、今では自分なりのキャプテン像に手応えも口にする。

 大学で成長を遂げた京谷は社会人一年目から即戦力として活躍する準備も進めている。それと同時に東海大仰星時代の同級生でもあるMF美藤倫(関西学院大)が2024年度にガンバ大阪入りを内定させたことも刺激となり、プロ入りも視野に入れる。

 前期を5位で折り返した大阪国際大学。大学最後の一年も後半戦、京谷のラストスパートに注目だ。

 (文=会田健司)