MF渋谷諒太キャプテン(写真=矢島公彦)

 「半端ないプレッシャーがありました」

 全国屈指の強豪校・流経大柏を率いて2年目の榎本雅大監督は、こう偽らざる胸中を語っている。

  確かに、そうだろう。

  前任者の本田裕一郎監督(現在は東京・国士舘のテクニカルアドバイザー)は20年近く流経大柏を指導し、その間に高校選手権や総体、高円宮杯U-18プレミアリーグといった全国大会を制覇している。高校サッカー界に名をとどろかす歴戦の将から後を託された榎本監督。築き上げられた歴史と伝統を継承していくプレッシャーたるや想像に難くない。

  だが、そんな重圧をはね返した。

 3年ぶり7回目となる選手権へ――。これまでの借りを返すかのように、宿敵の市立船橋を県決勝の舞台で退け、喉から手が出るほどに欲しかった全国への切符を手に入れた。

 「選手権の県予選の前に、全国で優勝しよう、と。そういってスタートしました。夏(総体2回戦敗退)に悔しい思いをしているぶん、何としてでも日本一になりたいです。初戦の日体大柏戦や決勝の市船戦のようにビハインドをはね返すパワーがついてきたし、試合を重ねるごとに進化している。まだまだ伸びしろがあると感じています」(榎本監督)

流通経済大柏ビッグフラッグ(写真=矢島公彦)

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 選手が主役のチーム作りが若き指揮官のモットーだ。

 「ゲームの入り方をどうするか、先制されたらどうするか、先制したらどうするか、ゲームのなかで起こり得る状況に合わせ、自分たちはどう対応していったらいいか。まずは選手たちだけでミーティングしてもらっています。そこに私は入りません。こうした取り組みによって自分たちで考えながらゲームを作ることができるようになってきたかなと思います」(榎本監督)

 中盤の構成力がチームの生命線となっているのは明らか。その中心がキャプテンで、ボランチの渋谷諒太(3年)だ。榎本監督は「客観的な視野を持ってゲームに入っている。ピッチのなかの監督のような存在」と称賛を惜しまない。

 キャプテン渋谷のまさに相方ともいえる松本洋汰(3年)は非常にスキルフルで、運動量が豊富なMFだ。メリハリの効いたパフォーマンスがチームに深い味わいをもたらす。県決勝で2ゴールを叩き込んだサイドハーフの高足龍(3年)、初戦の日体大柏戦で得点&PK誘発と、逆転勝利への原動力となったMFの小林恭太(3年)、U-16代表候補にリストアップされているサイドハーフの堀川大夢(2年)など、中盤に個性豊かな面々がそろう。

 2トップはU-18代表候補に名を連ねるテクニカルな川畑優翔(3年)とエネルギッシュな清水蒼太朗(3年)がファーストチョイス。プレースタイルの異なるコンビによって生まれる攻撃アクションは相手守備陣とって相当厄介だろう。前線での献身的な守備も見逃せない。

「ラインの設定はすべて田口に任せている」

 榎本監督がこういって、全幅の信頼を寄せるのがディフェンスリーダーのCB田口空我(3年)だ。危機察知能力に優れ、最終ラインを幅広くカバーする。

ゴール前に立ちはだかるデューフ・エマニエル・凛太朗(2年)は191センチの長身GK。準決勝の専修大松戸戦ではPK戦による勝利の立役者となった。

 激戦区の千葉県を勝ち抜いた流経大柏が目指すは、もちろん14年ぶり2回目の日本一。ボールを握ることもできるし、素早いカウンターを繰り出すこともできる。自在性のあるスタイルが今年のチームの魅力だろう。本大会までおよそ1カ月半、自分たちのサッカーにさらに磨きをかけ、初戦の12月29日、近大和歌山戦に臨む。

(文=小室功 写真=矢島公彦)

▽第100回全国高校サッカー選手権千葉予選
第100回全国高校サッカー選手権千葉予選