GKバーンズ・アントン

 今年こそは3度目の正直で初の選手権に――。その想いは届かず、またしても大成は決勝で涙を呑んだ。

 11月13日、第100回全国高校サッカー選手権東京予選B決勝が行われ、初出場を狙う大成は関東一と対戦。スコアレスで迎えた後半に喫した2失点を跳ね返せず、0-2で敗れた。

届きそうで届かなかった冬の檜舞台。試合終了のホイッスルが鳴ると、選手たちはピッチに崩れ落ちた。しかし――。そこに正GKバーンズ・アントン(3年)の姿はなかった。

 0-2で迎えた後半40分。前線に人数を割いて最後の猛攻を仕掛けた矢先、一瞬の隙を突かれた。自陣で守るのはバーンズのみ。大きく前方に出されたボールに反応したものの、ペナルティエリア外で相手FWと1対1の局面を迎えてしまう。

 「全選手が相手陣内に入っていた状況で、自分も高い位置にポジションを取っていた。裏に出たボールは全て自分でカバーしようと思っていたんです。ただ、下がるのが遅くなり、ここで打たれたら止められないと思って、エリア外だったけどその場に立ち止まった」

 ゴールを守る上で取った最善策は功を奏さず、無情にもボールは自分の手に当たってしまう。その後、審判からレッドカードを提示され、ピッチを後にした。

 代わりに入ったのは公私ともに仲の良いGK永田陸(3年)。ゴール前でのFKから再開となったが、「あいつなら絶対に止めてくれる」と信じていた。スタジアムの脇に下がったバーンズは視線を落として祈るように戦況を見守ると、3年間ともに戦ってきた盟友も思いに応える。ピンチを乗り切り、相手に3点目は許さなかった。

 結果は敗戦。3年間追いかけ続けてきた選手権出場の夢は果たせなかった。しかし、大成での3年間がなければ、今の自分は存在しない。中学時代はほとんど試合に出場できず、入学当初、自信はまるでなかった。それでも、1年次のインターハイ予選・準決勝で先発に抜擢され、チーム初の全国大会出場に貢献。その後も小山飛来と永田陸といった同級生のGKたちと切磋琢磨し、 「1年生から一緒にやってきて、二人とも最高の選手。彼らがいたから、成長できた」(バーンズ)。

 昨冬の選手権予選は怪我の影響で永田に決勝のゴールマウスを譲ったが、安定感抜群のシュートストップで評価を獲得。今年2月には町田への入団内定を勝ち取り、世代別代表にも選出されるまでになった。

 「入学当初は自信がない男でした。試合に出ていく準備もできず、プレーもうまくいかない。でも、1年生のインターハイ予選で出場機会に得てから、自覚が出てきた。今ではトレーニングに一番早く来て、アップも率先してやってくれる。全員が見習うぐらいの振る舞いで、本当に成長しました」とは豊島裕介監督の言葉。最後は笑顔で終われなかったが、最高の高校生活だったのは間違いない。今後はプロの世界に進む。「次の舞台でも決勝の悔しさを糧にし、町田でいち早く正GKの座を取りたい。そして、世界に羽ばたきます」と言い切った守護神は、次の目標に向けて新たなスタートを切る。

▽第100回全国高校サッカー選手権東京予選
第100回全国高校サッカー選手権東京予選