読売テレビ立田恭三アナウンサー

 今年で記念すべき第100回を迎える全国高校サッカー選手権大会。その大阪予選を1回戦から取材し続けている「あすリートチャンネル」と「高校サッカードットコム」が初めてタッグを組んだ。スタッフが、数ある〝激アツプレー″の中から、「テクニック」「連携」「豪快さ」などを加味し、独断と偏見で選ぶ“激アツプレー”BEST10!の企画をあすリートチャンネルで実施中。

 この初コラボを記念して、普段あまり見ることのない全国高校サッカー選手権大会のテレビ中継の舞台裏や、実況に挑むアナウンサーの心境などを、数々の試合で実況を担当してきた読売テレビ立田恭三アナウンサーにインタビューさせて頂いた。

ーー読売テレビに入ってからの立田さんの経歴を簡単に教えてもらえますか?

 最初からスポーツ担当のアナウンサーとして、うちのメインであるプロ野球と高校サッカーをずっとやらせてもらっています。特に高校サッカーは系列のテレビ局で手を取りながらやる読売テレビとしても非常に大事なものなので、諸先輩方から「高校サッカーを極めろ!」と最初に言われました。でも、お恥ずかしい話、入社するまでサッカーの試合を生で観たことがなかったんです。勿論テレビでは沢山観ていたんですけど。

ーーちなみに初めて生で観た試合は何の試合でしたか?

 2009年夏頃に長居スタジアムで行われた日本代表の試合でした。サッカーを生で観たら「こんなに面白いのか!こんなに盛り上がるのか!」と感動しまして、ちょうど、その年に初めて高校サッカーの中継をやらせてもらいました。アナウンサーが関わる高校サッカー中継の役割にも段階がありまして、まずは新人アナの仕事である両チームの応援席リポートから担当させていただいたのですが、「なんか難しいな。よくわからなかったな」というまま終わってしまいました。

 2年目になって両チームのベンチリポートを担当しまして、よりサッカーに近くで感じられる、まさにベンチの横に居ながら中継に関わりました。入社した年が88回大会で大阪大会の決勝が関大一高vs金光大阪、この年に関大一高が大阪代表として全国大会でベスト4まで行きまして、久しぶりに大阪代表がそこまで行ったんですね。そして入社5年目の2013年に初めて実況を担当させてもらいました。

ーーその時は他のスポーツでは既に実況はやられていたんですか?

 はい、プロ野球はもうデビューしていました。入社3年目の時にプロ野球で実況をデビューしまして、その他ではボクシングを少し喋っていたぐらいです。野球とサッカーって全然実況のスタイルが違うじゃないですか?そのサッカーの実況が「果たしてできるものなのか?」と不安の中やった記憶があります。

ーー高校サッカーの中継で心がけていることはありますか?

 (持ってきてくれた資料を見ながら)中継が始まって冒頭、オープニングの45秒で試合会場を映しながら実況アナウンサーが一人で喋る、という高校サッカー中継の伝統的なパートがありまして、そこはもうある意味出囃子と言いますか、この試合を視聴者に対して"こう見てね"という目線を付けながら話す独特な45秒なんですけど、45秒って結構長いんです。

 その時感じたことを話してもいいんですけど、不安なので、予めある程度原稿を作っていくパターンもあるんです。 季節感を入れたりとか歴史を入れたりするんですが、実はここは実況アナウンサーに全権委任されていまして。一応チェックは入るんですけど、ほぼ任されているんです。(資料を探しながら)あ、これだ!これが初めて大阪大会の決勝で実況した時のオープニングです。言いますね「高校三年間の集大成。仲間との約束。それぞれのリベンジ。大阪の頂点に向け色んな想いが交錯します。追い続けたボールの先に何があるのか?今日その答えがわかります」ていう(笑)。このやり過ぎている感じが…今だと少し恥ずかしいですね。

第92回全国高校サッカー選手権大会の大阪予選決勝、履正社vs東海大仰星のオープニング資料

ーー鳥肌が立ちました(笑)。

 それはいい意味ですか(笑)?

ーーいい意味です!凄くいいと思いました。これは毎年変えるんですか?

 そうですね、その年ごとのテーマもありますし、毎年見て頂いてる視聴者の方もいらっしゃるので「あれ?去年と同じこと言ってるぞ!」ってなってしまうので(笑)。

ーー初めて実況をやった年は履正社が初優勝だったという事ですね?

 はい、履正社vs東海大仰星で履正社が勝てば初優勝、東海大仰星が勝てば連覇という年でした。解説は松波さん(現G大阪監督)ですね。

ーーその実況をやる事になった時は取材に行って情報を集めたと思うんですが、どれぐらいの期間でどういう内容の取材をするんですか?

 大阪大会は200校以上が参加している大会なので、ベスト32ぐらいから取材に行って、6回戦、準々決勝、準決勝と4回の試合はとにかく「どんなサッカーをしているのか?」と全て観に行きます。この時の履正社高校は、久しぶりに決勝に上がってきたんですよ。だから先輩方も履正社高校をほとんど取材したことがない…「ここで新しく開拓していく」という事で、改めて気合が入りました。

 ですから平野監督(履正社高校)の幼き頃の話から、平野監督は四中工出身なんですけど、四中工の歴史から全部聞いて、今のチーム状況や注目選手だったりも色々聞いて…A4で20枚ぐらいにはなると思います。

ーーその時の両チームには何回取材していたんですか?

 準決勝で試合を観てお話を聞いて、決勝までの1週間で高校に2回足を運ばせていただいているので、3回お話を聞いています。これを両チームにやらせていただきます。

 なのでこの準決勝からの1週間は高校サッカーのこと以外考えたことがないです。

ーーその期間は他の仕事は無いんですか?

 他の仕事は入れないようにしています。それ以外は何もやりません(笑)。「その一週間は集中させてくれ」と。インターハイは観たりはしているんですけど1年間すべての試合を観ている訳ではないので、余すところなくっていうのは無理なんですけど、「チームに1年間どんなことがあって、どんな苦しかった事があって、ようやく選手権決勝を迎える」っていうのをその一週間でとにかく出来るだけ皆さんの話を聞きます。

 履正社はこの年全国でベスト8まで行くんですけど、僕も全国大会にずっとリポーターとしてついて行かせていただきました。負けた時にはもう号泣してしまいまして。本当に人前で泣くって事は中々ないんですけど、涙が止まらないってあるんですよね。「こんなに泣くか?」ってくらい泣きまして、それだけ想いも入っていましたし、それには自分でもびっくりしましたね。

 次回は、履正社で活躍した今年の全国高校サッカー選手権の応援リーダーにもなっている林大地選手(シント=トロイデンVV)の当時のエピソードなどについて深掘りする。

 (文・写真=会田健司)

▽全国高校サッカー選手権大阪大会“激アツプレー”BEST10!
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