MF阿部夏己主将

 最後の大舞台から去る悔しさと、全力を出し切った感触。それでも適わなかった相手との実力差。試合を終え、ロッカールームから取材エリアへ出てきた徳島市立の3年生たちには、様々な感情が入り混じっていた。

「試合中に『すげぇ』と思いながらやっていました」と話したのはキャプテンのMF阿部夏己だ。「いつもなら2〜3人の連動した守備でボールを奪えるところが、奪えない。それどころか、さらにギアを上げてくる。ドリブルを警戒すれば、パスもある。自分たちの守備のバリエーションを、相手の攻撃のバリエーションに上回れました」と試合を振り返った。

今年のチームは“近年で最も弱い”と言われるところからのスタートだった。タレントがいた去年の3年生たちが卒業し、自分たちはどこで勝負するのか?その問題に対して、河野博幸監督と選手たちが選んだのは守備力の強化だった。守備に人数を割いて自陣を固めて、そこからカウンターを狙う堅守速攻スタイル。ハイボールや飛び出しが魅力の大型GK中川真や、控えながら高い実力を持つPKストッパーのGK米田世波の存在も「失点しなければ負けない」という方向性の後押しとなった。今大会も2回戦は尚志とスコアレスでPK戦に突入し、終盤に投入された米田がPK戦で相手のキック2本を止めて初戦を突破。3回戦もセットプレーから奪ったゴールを守りきって、筑陽学園に勝利している。

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▽第98回全国高校サッカー選手権
第98回全国高校サッカー選手権