伊奈学園 vs 細田学園 (写真=埼玉通信・石黒登)

 今年10番を背負うFW齋藤真は前半と後半の勝負所で2ゴール。本人は「自分の持ち味は収めることだったり、前への推進力なんですけど、そこが今日は出せなかった。あとは決定力というところでもチャンスがあったんですけど、決めきれなかったので今日は30点くらいです」としていたが、得点外でも相手のセットプレー時には身体の強さと抜群のバネを生かしたヘディングで跳ね返し、空気作りの面でも下級生が半数を占めるチームを声やプレーで牽引していた。

そんな齋藤だが、このコロナ禍で一度は高校サッカーからの引退を決意していたという。

「このコロナ期間が明けて正直、関東予選やインターハイがなかったというところで、どうしてもサッカーへの感情が薄れてしまったところがあった。チームのみんなにも帰ってきてほしいと言われていたんですけど、(上田健爾)先生にも「夏で引退する」と言っていました」。

それでも指揮官とのもう一度話し合った末にチームへの復帰を決意。「もう一度自分を見つめ直した。みんなに認めてもらうために地道な作業から始めました」と最初に始めたのは草むしりから。そういった中で再び仲間たちの信頼を勝ち取り、今大会ではエースNo.10を背負う。

昨年は初のベスト8入りしたチームでも主力を務め、破れはしたものの準決勝の聖望学園戦では一時同点とするゴールを奪った齋藤だが、「3年生が自分を生かしてくれたというところで結果も出せた」。そして「次は自分の力でチームを引っ張っていく、仲間を生かしていくというところでは、まだ自分が引っ張っていく力が足りないんじゃないかと思います」。昨年は3年生に引っ張ってもらった分、今年は自分がチームを牽引するために大会を通しての成長を誓う。

戸塚西中出身のFWは「(中3で)進路がないという状況の時に上田先生に「3年後必ず全国に行くから是非来てほしい」と言われてその言葉を信じてここまで来た。裏切ってしまった部分もあるんですけど、今年が最後なので先生を必ず全国に連れて行って恩返ししたい」と語る。

一度は引退という形で裏切ってしまったかもしれない。それでも再びこの舞台に帰ってきたNo.10は、大会を通してさらに成長しながら、指揮官との約束の舞台である全国を目指す。

記事提供:埼玉サッカー通信・石黒登

▽第99回全国高校サッカー選手権埼玉予選
第99回全国高校サッカー選手権埼玉予選