試合が動いたのは後半5分。前半と同じく綾羽が立ち上がりから一条を押し込むと、左CKを獲得。宮本がゴール前に入れたボールをDF森風樹(3年)が折り返し、最後はMF吉岡柊介(3年)が押し込んだ。この一点で勢いに乗った綾羽はサイドが前半以上に積極的な仕掛けを披露。緊張が解れたFW渡辺夢叶(1年)も伸び伸びとしたプレーで攻撃を牽引し、追加点を狙った。後半11分には小松の右クロスのこぼれを井上が詰めたが、シュートは枠の外。31分に宮本のクロスから井上が放ったヘディングシュートもクロスバーに嫌われた。再三チャンスを作りながらも2点が奪えず。岸本幸二監督は「インターハイから半数近くメンバーが変わっている中でも完成度的には悪くない。ただ、夏休みからフィニッシュの精度を欠いて負ける試合を繰り返しているのに改善できていない」と振り返る。

 我慢の時間が続いた一条は、「後半はカウンターからフィニッシュまで持ち込む場面があったけど、途中から無くなってきたので最後はパワープレーしかないと考えた」(澤井監督)と残り10分を切ってから大型のDF篠原槙(3年)を前線に入れて、なりふり構わず同点を狙った。指揮官の策は見事にハマり、45分には右からのボールを篠原がヘッドで後ろに流すとDFに当たってコースが変わった所を途中出場のMF岩本涼太(3年)が決めて同点に追いついた。

 迎えたPK戦では共に3,4番手のキックが失敗に終わったが、5人目が成功した一条に対し、綾羽は失敗。この結果、1-1(3PK2)で一条が勝利した。素早いプレスに苦しむなど課題が出た試合ではあるが、劇的な流れで格上との一戦を制したのは勢いと自信になる。間もなく始まる選手権予選を前に弾みのつく一勝になるのは確かだ。

(文・写真=森田将義)