(写真提供=流通経済大学サッカー部)

 大学サッカー界屈指の強豪として知られる流通経済大学は、現在まで100名を超えるプロサッカー選手を輩出してきた。その中の多くは、中野監督曰く「全国的には無名の選手」だという。そこで今回は、選手をスカウティングする際のポイントやチームとして求める選手についてなどの気になるポイントを、中野雄二監督に直撃した。

ーー流通経済大学サッカー部がチームとして求める選手とはどういった選手でしょうか?

 求めるのは「サッカーに対するひたむきさ」です。それがあれば、技量というか高校までの実績のようなものは関係ないと思っています。というのも、これは例えですけれども高校生が大学進学を考えた時にウチ(流通経済大学)と早稲田大学さんから声を掛けられたとしたら、間違いなく早稲田大学さんに行くと思います。関東の1部ですと、早稲田さん以外でも明治大学さん、法政大学さん、筑波大学さん、中央大学さん…などから声を掛けられた場合は、おそらくほとんどウチには来ないでしょう。それは知名度や歴史、地理的なものも総合的に判断するとやむを得ないと思います。ただ「自分はサッカー1本で絶対に成功したい」という思いの強い選手は、比較的ウチを選んでくれている傾向があるように感じます。

 ウチとして言えることは「流通経済大学でサッカーを学んで頑張りたい」と考えてくれている選手に対して、ハード面、ソフト面ともに最高のものを用意して、そのやる気を成功できるように導きます、最大限の努力をします、ということです。現実的に欲しいと思った選手がピンポイントで集まってくる大学ではありませんので、「来てくれた選手をいかに育てるか」ということを重視しています。今まで100名近くJリーガーを輩出してきましたけど、鳴り物入りで入学してきてJリーガーになった選手はほとんどいないんです。どちらかというと、県の大会でも決勝で負け全国大会に出られなかった選手や、県でベスト4やベスト8くらいレベルの選手がウチには来ています。そんな全国的には無名の選手が「たたき上げ」でJリーガーになっているケースが多いんですね。ですからユース出身の選手は割合的に少ないですね。と、言いつつ今年の新入部員の中にはユース出身の選手が多いです。

 ウチの部員の傾向から、個人的な意見を言わせていただくと、高体連出身の選手は入学した時に「この選手はレギュラーになれるのかな?」と首をかしげて見ているようなレベルでも、4年間で伸びてきます。それに対してJリーグのアカデミーから来るユース出身の選手は1年生から試合に出られるなど、能力的には優れたものを持っています。でも4年後を見ると、伸びていない選手も多いんです。少し試合に出られなかったりすると「俺の方が絶対に上手いのに」など不要なプライドが邪魔をするのかなと。それともう1つ言えることは謙虚さに違いが出ます。高体連出身の選手の方が、得てして謙虚です。

 今で言うと、ポルトガルの1部リーグで活躍している守田英正(CDサンタ・クララ)がわかりやすい例で、ウチに来た時は守備なんてほとんどやったことがありませんでしたから。背番号10番を付けた“オン・ザ・ボール”のトップ下の選手でしたから。その選手が今ではボランチやSB、CBなど、どちらかといえば守備力が評価されて川崎フロンターレでも活躍し、ポルトガルでも頑張っていますから。

 彼は大阪の金光大阪高校出身で、フェスティバルのときに流経大柏と試合をしてボロ負けしたらしいんです。そのときに「こんな強い高校の選手が多く進学する流通経済大学でサッカーがしたい、そこで彼らに勝たないとダメだ」と思ったそうです。関西のいろいろな大学から声を掛けられたそうですが、それをお断りしてウチに飛び込んで来てくれたんです。こちらからスカウトしたわけではありません。そういった気持ちを持った選手だから、海外でも活躍できているのかなと思います。大学卒業して川崎フロンターレに入団しましたが、じつは関西の強豪チームからも誘われていたんです。彼は大阪出身ですから。でも「いちばん強いフロンターレに行きたい」と話てくれました。当時は同じポジションにエドゥアルド ネットという選手がいたので、私が「ブラジル人からポジション奪うのは大変だぞ」と言うと「いや大丈夫です。絶対奪います」と。守田は「自分より優れた選手がいるチームで勝負したい」というハートを持っている選手なので、そこが成功している秘訣なのかなと思いますね。そういう気持ちを持っている人は、ウチで成功します。

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