今年の総体予選・準決勝では静岡学園をシャットアウト(写真=多田哲平)

――ひとつ結果が出たことで監督自身のメンタリティも変わったわけですね。

 【マッチレポート】令和4年度全国高校サッカーインターハイ(総体)静岡予選 決勝 磐田東 vs 藤枝明誠

 それまでは私は、自分はアウトローだからとずっと言い聞かせていました。もちろん、つながりは大事なので、いろんな指導者のかたに勉強させてもらいながらでしたけどね。でも、どうせやるなら勝たせてあげたい。西部地域だけでなく、中部地域に集まっている強豪校にどうしたら勝てるか、そういう視野が広がったのが、その頃だったかもしれません。

――では、そうした経験も踏まえ、選手を指導するうえで大事にしているものはなんでしょう。

 教員になって30年経つので、当たり前ですけど、考え方は変化しています。今大事にしているのは、子どもたちに考えさせる問いかけを多くすること。押しつけるのではなくて、あくまでアドバイスであって、選手自身が判断する、思考力を持ってもらいたいですからね。

 これってサッカーだけではないと思うんですよね。ここから先、社会人になるうえでも、現在の学校生活でも大事なこと。ひとりの人間として思考力を育むこと、今はそれを考えながら接しています。

――インターハイ予選では、過密日程のなかでも選手たちには、試合の合間に、あえて「ケアしておいて」とひと言だけ伝えるにとどめていましたよね。それもある意味、選手たちに考えさせるためにやったことだったんですね。いわば放任主義というか。

 自然とそういう意識で言ったかもしれないですね。そもそも私は、練習や試合のあとに選手を集めて話をあまりしないんです。勝とうが負けようが、終わってしまったことは仕方ないので。いつも本当にひと言ふた言、『切り替えよう』とか、事務連絡を伝えるだけとか。ただ後日集まった時に、一度整理して、前のゲームの改善点を伝える。それも短めですけど、そういう感じでやっています。

――それも30年間の変化ですか?

 そうですね。とにかく今は選手たちに考えさせたいので。なかにはコミュニケーションの取り方が初めは不得手な選手もいます。だけど、あえてこちらから直接手を差し伸べないことで、選手間でいろんな話をし始めるもの。それに、今は毎試合、映像が残っていますから、それを材料に、選手主体で意見を交換できます。

#3へ続く

(文・写真=多田哲平)