(写真=森田将義)

ーー選手が持つ個性を消さないために意識されていることを教えてください。

 とても難しい作業だと思います。過去に指導してきた選手には、私が個性を伸ばしきれずに巣立っていった選手もいます。答えはまだ見つけられていませんが、人によって変えなければいけません。一人ひとりを理解した上での声掛けを意識しています。選手に好かれるための声掛けではダメで、根本的には「選手がもっと良くなるためどうすれば良いか」といった想いが大事。優しい言葉だけでなく、時には強い言い方になることもあります。敢えて声掛けしないのも、選手への声掛けになる場合もあるでしょう。子どもからすれば、「俺だけなぜ怒られるんだろう」と不貞腐れる場合もあるかもしれませんが、そこは意識的に変えています。

ーー人ひとりを理解するためには、選手の観察が重要です。

 できるだけ選手を見たいですね。他チームの監督に「よく新入生全員の名前を覚えていますね」と驚かれますが、基本的には入学するまでに下の名前で選手を呼べるようにしています。下のカテゴリーまで選手をしっかり把握しているのは、私の強みだと思います。常に下のカテゴリーもチェックしているので、1年生の頃はCチームだった選手が最終学年になるとスタメンになっているケースもあります。そうした抜擢はチーム内の競争を促進し、選手の成長に繋がります。自分を律して主体的に頑張れる選手ばかりではありません。「頑張らなあかんな」と思えるライバルや、頑張れない時にハッパをかけてくれる仲間との競争は必要です。

(取材・写真=森田将義)