歓喜の市立船橋(写真=小室功)

 あれからおよそ10カ月半。コロナ禍によって夏の高校総体が中止に追い込まれ、U-18プレミアリーグも大幅に大会方式が変更されるなど、チーム作りが難しいなか、選手権での“全国行き”を期して準備した。だが、県予選の前は「練習試合で勝てず、自分たちのやっていることに今ひとつ自信が持てなかった。本気になりきれていなかった」と、就任2年目の波多秀吾監督は振り返る。

 前年度のチームには鈴木唯人(現・清水)や畑大雅(現・湘南)といった突出したタレントがいた。そうした存在がいないぶん、現チームの持ち味は「団結力」にほかならない。なかでもキャプテンの石田を軸にするディフェンスは粘り強く、球際の激しさ、切り替えの素早さ、連係面など、「試合を重ねるごとに力がついていった」と、波多監督は好感触を口にしている。

 宿命のライバルである流通経済大柏との決勝では、攻撃力に優れるチームに対してチャンスらしいチャンスを作らせず、失点ゼロに抑え込んだ。ボールへの執着心、集中力がすさまじく、延長を含め、100分間を戦っても高いプレー強度を維持した。「監督やコーチからどう対処したらいいか、教えてもらい、それをチームみんなで理解して実行できた。ねらいどおりだった」と、リーダーシップを発揮した石田が胸を張る。

 全国屈指の激戦区を勝ち抜いたとはいえ、まだスタートラインに立ったに過ぎない。

 「自分たちがやるべきことを見つめ直して、もう1段階、2段階上げられるように、チームとしても個人としても一日一日のトレーニングを大事にしながら取り組んでいく」(石田)

 一体感ある堅守をベースに攻撃力に磨きをかけ、全国の舞台に挑む市船。目指すは、もちろん9年ぶり6回目の日本一だ。

(文・写真=小室功)

▽第99回全国高校サッカー選手権千葉予選
第99回全国高校サッカー選手権千葉予選